明日は将棋の王将戦一次予選で杉本昌隆七段と藤井聡太六段の師弟対決が行われます。

 

 

現在、藤井六段は13連勝中。この連勝は四段時代の1月11日の中田功七段戦から始まっていて、2月1日の順位戦C級2組の梶浦四段戦まで6連勝。ここで五段に昇段。そして、2月17日の朝日杯オープン戦で優勝するまで5連勝。五段としては無敗のまま六段に昇段。そして昇段後も2連勝でただいま13連勝です。三つの段位にまたがる連勝記録というのも珍しいのではないかと思います。

 

さて、藤井六段を小学生の頃から指導してきた杉本七段。今は「天才中学生棋士の師匠」として有名になりましたが、もともと振り飛車党を代表するトップ棋士の一人でもありました。タイトル戦の登場歴はないものの、10年ほど前には順位戦B級1組でA級昇級(八段昇段)まであと一歩まで行って、同じ勝敗の棋士と順位1枚の差で昇級を逃す「頭ハネ」を経験しています。それから10年経ってピークを過ぎてしまった感がありますが、勝利数基準の八段昇段まであと13勝だそうです。

 

杉本七段は藤井六段の入門時からその才能をよく理解し、伸び伸びと自由に育てる方針を採ってきたそうです。自分自身は振り飛車党で、振り飛車戦法の本まで出しているにもかかわらず、藤井六段にはいっさい振り飛車をやれとは言わなかったとのこと。また、師匠と他の弟子との練習将棋を藤井少年が見ているとき、弟子の方だけでなく師匠の指し手であっても、もっとよい手があると思ったら指摘させるようにしたそうです。自分の権威やプライドにこだわらなかったことが藤井少年の自由な発想を伸ばしたのでしょう。

 

それでいて藤井六段はとても礼儀正しく、どんなに勝ってもおごらず、謙虚なコメントを出し続けているのは、師匠の謙虚な人柄を見て学んできたからではないかと思います。二人は練習将棋を通算100局ほど指していて師匠が勝つのは2割程度とのことですが、そんなこととは無関係に、藤井六段が師匠のことをとても慕い、尊敬していることが伝わってきます。

 

さて、師弟対決の行方はどうなるか。予想を結論から言えば最終的には藤井六段が勝つと思います。ただ、最後の勝敗に至るまでの中味はかなり拮抗した熱戦になるのではないかとも思います。

 

藤井六段はプロ入りしてから一度も振り飛車をやったことがありませんが、師匠との練習将棋を通じて対振り飛車の戦い方を学んできたはずです。一方、藤井六段の成長を見続けてきた師匠には他の棋士には見えない弱点が見えている可能性があります。そして、その弱点を突く手は練習将棋ではやらずに実戦に取ってあったとしてもおかしくありません。

 

プロ入り後の79局中、11敗しかしていない藤井六段ですが、その敗戦一つ一つから大きなものを吸収して成長してきました。弟子を負かすことでその成長を促すというのが師匠の本来の姿です。杉本七段はそのつもりで全力で弟子に向かっていくだろうと思います。

 

しかしながら熱戦の末に、最後に驚異的な終盤力で藤井六段が勝つ、と予想します。それでも深々と頭を下げて師匠への感謝をコメントする・・・そんな図が浮かんできます。そして、敗れた杉本七段の目に悔しさと弟子の成長の喜びが入り混じった涙があふれる・・・なんて美しい光景を思い描いたりします。

 

明日、楽しみです。

 


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